KNOWLEDGEコラム
リスティング広告のCPA(1件の成果にかかった費用)が上がる背景には、検索語句の広がり、広告文や構成の状態、遷移先ページの変化、計測のズレなど複数の要因があります。運用を代理店に任せている場合でも、レポートの数字から確認できる項目と、代理店に確認する項目に分けて整理できます。まず要因を切り分けることから始めます。
この記事でわかること
CPAの上昇は、広告の配信内容、自社サイト側の変化、計測、競合や季節といった外部環境など、複数の要因が重なって起きることがあります。数字だけを見て運用の良し悪しを判断する前に、どこで何が起きているかを分けて見ると、次に確認する場所が絞れます。
「先月よりCPAが上がっている」という事実は、レポートを見れば分かります。ただ、その理由まではレポートの数字だけでは読み取れないことが多くあります。同じ上昇でも、広告の側に要因がある場合と、広告の外に要因がある場合とでは、次に取る手が変わります。
この記事では、次の順で整理します。
各項目では、レポートや共有資料から発注側で確認できることと、代理店に確認しないと分からないことを分けて書いています。管理画面を自分で操作する前提ではなく、手元にある数字と資料から整理できる範囲を中心にしています。
数値が動いた時期と、入札・予算・構成・広告文などを変更した時期を並べて見ると、要因の見当がつきやすくなります。何をいつ変更したかは発注側からは見えないことが多いため、変更履歴の共有を依頼する項目になります。
CPAが上がったとき、先に確認しておきたいのが「その前後に何か変えたか」です。リスティング広告では、次のような変更が数値の動きにつながることがあります。
自動入札(媒体側が成果の見込みに応じて入札額を調整する仕組み)を使っている場合、設定を変更すると、配信を調整し直す学習期間に入ります。この期間は一時的に数値が振れることがあります。変更の直後にCPAが上がっていても、それが一時的な動きなのか、傾向として続いているのかは、少し期間を置いて見ると判断しやすくなります。
こうした変更は代理店側で行われるため、発注側が受け取るレポートには表れないことがあります。「いつ、何を、どういう意図で変更したか」をまとめた変更履歴を共有してもらえると、数値の推移と並べて見られるようになります。定例の報告に含めてもらうよう依頼しておくと、次に数値が動いたときにも照らし合わせやすくなります。
CPAは「クリック単価 ÷ CV率」に分解できます。クリック単価が上がったのか、CV率が下がったのかによって、次に見る場所が変わります。
CPAは、広告費をCV(問い合わせや購入などの成果)の数で割った数字です。CPAの数字だけを見ていても、なぜ上がったのかは分かりません。そこで、CPAを2つの数字に分けて見ます。
CPA = クリック単価 ÷ CV率
クリック単価は1回のクリックにかかった費用、CV率はクリックした人のうちCVに至った割合です。クリック単価が変わらずCV率が半分になればCPAは2倍になり、CV率が変わらずクリック単価が上がれば、CPAもその分上がります。同じ「CPAの上昇」でも、どちらの数字が動いたかによって、確認する場所が変わります。
| 動いている数字 | 考えられる背景 | 次に確認する場所 |
|---|---|---|
| クリック単価が上がっている | 競合の出稿の増加、繁忙期などの季節要因、検索語句の広がり | 検索語句、広告文と構成 |
| CV率が下がっている | 遷移先ページの変化、訴求内容と検索した人の意図のずれ、計測のずれ | 遷移先ページ、計測、広告文 |
| 両方が動いている | 複数の要因の重なり | 変更履歴と照らし合わせながら、順に確認 |
※ 上記は一般的な整理であり、商材や配信の状況によって当てはまり方は異なります。
推移を見るときは、前月との比較だけでなく、前年の同じ月や数か月前との比較も並べると判断しやすくなります。季節によって検索の量や競合の出稿が変わる商材では、前月との比較だけでは季節の影響と区別がつかないことがあります。
なお、どの水準のCPAを目標とするかは、商材の単価や利益率によって変わります。目標とするCPAの考え方は、広告予算の決め方の記事で整理しています。
リスティング広告では、実際にどんな言葉で検索した人に広告が表示され、クリックされたかを確認できます。意図と離れた語句が増えていると、クリック単価とCV率の両方に影響することがあります。
リスティング広告は、登録したキーワードと、ユーザーが実際に入力した検索語句が完全に一致したときだけ表示されるわけではありません。マッチタイプ(キーワードと検索語句をどこまで近いものとして扱うかの設定)によっては、登録したキーワードに関連する幅広い語句でも広告が表示されます。
この幅が広がると、商材とは関係の薄い語句や、まだ情報収集の段階にある人の語句でクリックが発生することがあります。クリックは増えてもCVにはつながりにくいため、結果としてCPAが上がる、という流れです。
検索語句の一覧を見るときは、次の点を確認します。
語句が商材の意図に合っているかどうかは、商材をよく知る発注側のほうが判断しやすい場合があります。代理店からは関連がありそうに見える語句でも、自社から見ると対象外の顧客層だった、ということもあります。
定例のレポートに検索語句の情報が含まれていない場合は、共有を依頼する項目です。全件でなくても、費用の大きい語句の上位だけでも見られると、配信の実態がつかみやすくなります。
広告文が検索語句と噛み合っているか、アセットが設定されているか、キャンペーンと広告グループの構成がどうなっているか、の3点を確認します。
検索した言葉と広告文の内容が離れていると、広告が表示されてもクリックされにくくなります。たとえば「料金」を含む語句で検索した人に、料金に触れていない広告文が表示される、といった状態です。
どんな広告文を配信しているかはレポートに載っていないことも多いため、一覧を共有してもらうと確認できます。見るポイントは、広告としての技術的な出来ではなく、自社の商材の説明として適切かどうかです。サービス内容や価格、対応地域などが現状と合っているか、自社が伝えたい強みが入っているかは、発注側の視点で確認しやすい部分です。
アセットは、広告文に追加して表示できる情報です。主なものに次のような種類があります。
アセットが設定されていると、広告が画面上で占める面積が広がり、伝えられる情報量も増えます。実際に表示されるかどうかは検索の状況によって変わりますが、どのアセットが設定されているか、その内容が現状と合っているかは確認できる項目です。サイトリンクの遷移先が古いページのままになっていないか、補足情報の内容が変わっていないかもあわせて見ておくと安心です。
リスティング広告は、キャンペーン(予算や配信地域などを設定する単位)の中に、広告グループ(関連するキーワードと広告文をまとめる単位)がある構成になっています。
確認したいのは、広告グループの中のキーワードと広告文が関連しているか、そしてキャンペーンごとの予算がどう配分されているかです。性質の異なるキーワードが一つの広告グループにまとまっていると、どの語句にも合う広告文を用意しにくくなります。また、成果が出ていない領域に予算が集中していないかは、キャンペーン別の費用とCV数を並べると見えてきます。
構成には、代理店側の判断と意図があります。「なぜこの分け方にしているのか」「予算配分をどう考えているのか」は、代理店に確認する項目です。
広告の側ではなく、自社側の変化がCV率に影響していることがあります。クリック数は変わらずCVだけが落ちている場合は、先にここを確認します。
広告をクリックした人が訪れるページ(遷移先ページ)で何かが変わると、広告の配信内容が同じでもCV率が動きます。数値が動いた時期の前後に、次のような変化がなかったかを振り返ります。
これらは社内で決まることが多く、代理店には共有されていない場合があります。代理店から見ると、配信は同じなのにCV率だけが下がった状態に見えるため、要因の特定に時間がかかります。数値が動いた時期に社内で何があったかを自社側で振り返ると、見落としに気づきやすくなります。
変化があった場合は、その内容と時期を代理店にも共有しておくと、以降の数値の見方がそろいます。
管理画面上のCV数と、実際に届いている問い合わせ件数を突き合わせます。サイト改修やフォームの仕様変更のあとは、計測が止まっていないかを確認します。
レポートのCV数が減っていても、実際の問い合わせ件数は変わっていない、ということがあります。この場合、成果が落ちたのではなく、計測がずれている可能性があります。
サイト改修やフォームの変更のあとは、成果を計測するための設定が外れたり、完了ページのURLが変わって計測されなくなったりすることがあります。レポート上のCV数と自社で把握している問い合わせ件数を月単位で並べておくと、ずれに気づけます。ずれが見つかった場合は、計測の設定を確認してもらうよう代理店に依頼します。
ここまでの内容を踏まえて、代理店に確認したい質問をまとめます。回答の内容とあわせて、根拠を説明できるか、分からない部分を分からないと言えるかも確認したい点です。
質問の例は次のとおりです。
CPAが上がった理由は、一つに特定できないこともあります。そのため、確認したいのは回答の内容だけではありません。どの数字を根拠にそう考えているのかを説明できるか、まだ分からない部分を分からないと言えるか、という受け答えの仕方も見ておきたいところです。
質問への受け答えは、今後のやりとりを推し量る手がかりにもなります。提案の段階で受け取った資料を同じ観点で読み直す場合は、見積もりとシミュレーションの見方の記事で、前提条件を確認する質問の例を整理しています。
確認しても要因が絞れない場合は、自社で整理できることを先に進めたうえで、外部の視点を入れる方法もあります。
ここまでの項目を確認しても要因が絞れないときは、まず次のことから始められます。
要因が広告の運用側にあるのか、商材やサイトなど自社側にあるのかによって、次に取る手は変わります。この切り分けの考え方は、代理店を変えたいときに先に確認したいことの記事で整理しています。
Meta広告など他の媒体も併用している場合、媒体によって確認する項目は異なります。Meta広告の配信内容の見直しについては、Meta広告のCPAが上がったときに見直すチェックリストで整理しています。
社内の材料だけでは判断がつかない場合は、現在の運用体制とは別の立場から、一度数字を見てもらう方法もあります。
いまの広告運用が適切かどうかを、第三者の立場で確認します。オンラインで30分、管理画面やレポートを画面共有いただきながら拝見します。資料のお預かりや権限の共有は不要で、代理店の変更を前提とした診断ではありません。
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