KNOWLEDGEコラム
広告運用代行の提案では、費用の内訳を示す見積書と、成果の見込みを示すシミュレーションという2種類の資料が出てきます。見積書は何にいくらかかるか、シミュレーションはどういう前提で数字が置かれているかを確認する資料です。それぞれ見る場所が異なります。
この記事でわかること
見積書は費用の内訳を示す資料、シミュレーションは成果の見込みを示す資料です。同じ提案書に綴じられていることが多いものの、確認する観点が異なります。
広告運用代行を検討して提案を受けると、多くの場合、2種類の資料が一緒に提示されます。1つは運用手数料や初期費用などを並べた見積書、もう1つは想定する広告費でどのくらいのクリックや問い合わせが見込めるかを示したシミュレーションです。
| 項目 | 見積書 | シミュレーション |
|---|---|---|
| 示している内容 | 何にいくらかかるか(費用の内訳) | 広告費に対して、どのくらいの成果が見込めるか |
| 確認する観点 | 費用の区分と、その費用に含まれる業務の範囲 | 数字がどういう前提で置かれているか |
| 数字の性質 | 契約条件として取り決める金額 | 前提条件にもとづく試算 |
※ 資料の名称や構成は依頼先によって異なり、1つの資料にまとめて記載されている場合もあります。
2つが同じ提案書に並んでいると、一続きの資料として読んでしまいがちです。ただ、この2つを混同すると、「費用が妥当かどうか」と「成果が見込めるかどうか」を一緒くたに判断してしまうことがあります。たとえば、見込みの数字を先に見て、費用に含まれる業務の範囲を確認しないまま比較を進めてしまう、といった形です。
この記事では、見積書とシミュレーションを分けて、それぞれどこを見るかを整理します。
見積書では、金額に加えて、それぞれの費用が何を対象にしているかを確認します。運用手数料の算出方法と対象範囲、広告費と手数料の区分、初期費用、クリエイティブ制作費、レポートや打ち合わせの費用、最低出稿額・最低契約期間が主な項目です。
運用手数料は、広告費に対する料率で決まる形と、支援内容に応じた固定額で決まる形が一般的です。料率の場合は、広告費が増減すると手数料も連動して変わります。固定額の場合は、広告費の増減にかかわらず一定の金額になります。
あわせて確認したいのが、その手数料がどの業務を対象にしているかです。同じ「運用手数料」という名目でも、日々の入札や予算の調整を指す場合もあれば、媒体の選定や計測の設定、改善の提案まで含む場合もあります。料率の場合は、どの媒体の広告費が計算の対象になるのかも確認しておくと、複数の媒体を使うときに認識がそろいます。
見積書の提示総額には、媒体に支払われる広告費と、依頼先に支払う手数料が合わせて記載されていることがあります。手数料が広告費の枠の内側に含まれている書き方もあれば、広告費とは別に上乗せされている書き方もあります。
総額のうち、どこまでが媒体に支払われる費用で、どこからが手数料なのかを分けて確認します。この区分が分かると、実際に配信に使われる金額がいくらになるのかを把握できます。
アカウントの開設、配信の初期設定、計測タグの設置など、運用を始める前の作業に対して初期費用が設定されている場合があります。初期費用の記載がない場合も、同じ作業が運用手数料に含まれているのか、そもそも依頼範囲に含まれていないのかは、依頼先によって異なります。金額の有無だけでなく、どの作業が対象になっているかを確認しておきます。
バナーや広告文、動画などの制作費は、運用手数料に含まれる場合と、別途の費用になる場合があります。含まれる場合も、月あたりの制作本数に上限が設けられていることがあります。運用を続けるなかで素材を差し替える頻度を想定し、上限を超えた分がどう扱われるかまで確認しておくと、契約後の費用の見通しが立てやすくなります。
定期レポートの作成や定例の打ち合わせが、手数料に含まれているか、別途の費用になるかも確認する項目です。含まれている場合も、レポートの頻度や打ち合わせの回数に決まりがあることがあります。
依頼の条件として、月あたりの最低出稿額や最低契約期間が設けられている場合があります。料率の場合に最低手数料が設定されていると、広告費が一定額を下回っても、手数料は下限の金額になります。途中で配信を止めたり予算を縮小したりする可能性があるときは、あらかじめ条件を確認しておきます。
費用の体系や一般的な相場については、広告運用代行の費用相場の記事で整理しています。この記事では相場の水準には立ち入らず、見積書のどこを確認するかに絞って進めます。
見積書は金額の内訳を示す資料のため、業務範囲の線引き、担当体制、報告の頻度と内容、広告費の支払い方法といった項目は記載されていないことがあります。これらは口頭またはメールで確認しておく項目です。
見積書に並ぶのは、費用の項目と金額です。一方で、契約後の進め方に関わる項目のなかには、金額の内訳だけでは読み取れないものがあります。
| 項目 | 確認したい内容 |
|---|---|
| 業務範囲の線引き | どこまでが依頼範囲で、どこからが自社で対応する作業か(LPの修正、素材の用意、計測の設定など) |
| 担当体制 | 誰が窓口になり、誰が実際の運用を担当するか。担当者が変わる場合の引き継ぎの形 |
| 報告の頻度と内容 | レポートの頻度、記載される指標、数値に変化があったときに共有されるタイミング |
| 広告費の支払い方法 | 依頼先が媒体への支払いを立て替えて請求するか、自社のクレジットカードなどで媒体に直接支払うか |
業務範囲の線引きは、提示総額の違いにもつながる項目です。同じ「運用代行」でも、LPの改善提案や素材の制作まで担う形と、配信の調整を中心に担う形とでは、含まれる作業の量が異なります。依頼先の種類によっても担う役割は変わり、配信の実行を中心とする形もあれば、方針の整理や判断の支援を中心とする形もあります。この違いは、代理店とコンサルティングの違いの記事で整理しています。
広告費の支払い方法は、請求の流れや社内の経理処理に関わります。どちらの形にも手続き上の特徴があるため、自社の経理の進め方と合うかどうかを確認しておくと、契約後の手続きが進めやすくなります。
これらは見積書の段階では書面になっていないことがあります。口頭で確認した内容も、メールなどで残しておくと、契約後に認識をそろえる際の手がかりになります。
何をもって成果とするか、許容できる獲得単価はいくらか、いつまでに何を判断するかが決まっていると、提示された数字を自社の基準で読めるようになります。ただし、相談の段階でKPIが定まっていないことは珍しくなく、相談先と一緒に決めていく進め方もあります。
シミュレーションには、クリック数や問い合わせ件数、獲得単価といった数字が並びます。これらの数字が自社にとって良い水準なのかどうかは、比べるための基準がないと判断できません。その基準になるのが、次のような項目です。
たとえば「月に問い合わせ○件」という見込みが示されても、問い合わせのうちどのくらいが受注につながり、1件の受注でどのくらいの利益が出るのかが整理されていなければ、その件数で採算が合うのかは分かりません。判断の時期が決まっていなければ、どの時点の数字を見て続けるかどうかを決めるのかも曖昧になります。目標とする成果から広告費を逆算する考え方は、広告予算の決め方の記事で整理しています。
ただ、相談の段階でKPIが定まっていないことは珍しくありません。初めて広告を使う場合や、社内に過去の配信実績がない場合は、どのくらいの獲得単価が適切なのか、その水準そのものを判断する材料がないためです。
この場合、自社だけでKPIを決めてから相談する必要はありません。商材の単価や受注までの流れ、これまでの営業の状況などを共有し、相談先と一緒に水準を決めていく形でも進められます。
その際に確認したいのは、提示された水準について、なぜその数字を置くのかという説明があるかどうかです。「この商材単価と受注の割合であれば、獲得単価がこの範囲に収まると採算が合う」といったように、自社の条件から水準を組み立てる説明があると、配信を始めたあとに見直すときの基準にもなります。
シミュレーションで確認するのは、結果の数字そのものより、どういう前提で置かれた数字かという点です。前提のいずれかが変われば、結果の数字も変わります。
シミュレーションは、いくつかの前提となる数値を掛け合わせて作られるのが一般的です。たとえば、広告費を想定クリック単価で割ってクリック数を出し、そこにCV率(コンバージョン率)を掛けて問い合わせなどの件数を出す、という組み立てです。そのため、前提の置き方によって結果の数字は大きく動きます。
| 項目 | 前提A | 前提B |
|---|---|---|
| 月の広告費 | 30万円 | 30万円 |
| 想定クリック単価 | 150円 | 100円 |
| クリック数 | 2,000回 | 3,000回 |
| 想定CV率 | 1% | 2% |
| 問い合わせ件数 | 20件 | 60件 |
| 獲得単価 | 15,000円 | 5,000円 |
※ 計算の仕組みを示すための仮の数値です。実際の水準は、業種・商材・媒体・時期などによって異なります。
広告費が同じでも、クリック単価とCV率の置き方が変わるだけで、見込みの件数は3倍の差になります。どちらの前提が自社に当てはまるかは、表の数字だけでは判断できません。業種や商材によって数値の水準が異なるため、次のような前提条件について、それぞれの根拠を確認します。
想定クリック単価やCV率は、依頼先の過去の運用実績、媒体が公開している情報、業界で一般的に参照される数値など、参照元によって値が変わります。参照している数値が別の業種や商材のものであったり、時期が異なっていたりすると、自社で配信したときの数値とは差が出ることがあります。
媒体や配信手法も同様です。検索広告を前提にした数値と、SNS広告やディスプレイ広告を前提にした数値では、クリック単価やCV率の水準が異なります。同じ媒体でも、どういう配信対象に向けて出すかによって数値は変わります。
これらのいずれかが変われば、結果の数字も変わります。シミュレーションの数字は、前提とセットで読むものと捉えておくと、資料の見方が定まりやすくなります。
運用型広告は配信しながら調整していく性質があるため、事前の試算は幅を持って見ます。一方で試算は、想定している予算規模で目的に届きそうかを判断する材料になります。
運用型広告は、配信を始めてから反応を見て、入札や配信対象、クリエイティブを調整していく性質があります。事前のシミュレーションは、配信前の時点で置いた前提にもとづく試算であり、その数字どおりの結果になることを示すものではありません。
実際の配信では、次のような要因で数値が動きます。
そのため、シミュレーションは1つの数字としてではなく、上下に振れる幅を持ったものとして見ておくと、配信を始めたあとの数値との差を落ち着いて捉えられます。
ただし、試算に意味がないわけではありません。想定している予算規模で目的とする成果に届きそうか、それとも前提がかなり有利に動かないと届かないのか、といった見当をつける材料になります。予算の規模と目的の釣り合いを配信前に確認できるという点で、シミュレーションは判断に役立つ資料です。
前提条件がそろっていない資料同士は、横並びで比較できません。条件をそろえて資料を出してもらったうえで、資料について質問し、その受け答えを確認します。
複数の依頼先から提案を受けると、見積書の総額やシミュレーションの数字を並べて比べたくなります。ただ、各社が別々の前提で資料を作っている場合、数字の差が前提の差によるものなのかどうかを見分けられません。
同じKPI・同じ予算・同じ媒体・同じ期間を伝えたうえで資料を出してもらうと、横並びで見られるようになります。KPIが決まっていない場合は、「問い合わせ件数を成果とする」「月の広告費は○万円程度」など、決まっている範囲の条件だけでもそろえて伝えておくと、比べやすくなります。
また、提示総額の差は、業務範囲の差によって生じていることが多くあります。見積書に書かれていないことで挙げた業務範囲の線引きや、クリエイティブ制作費の扱いをそろえて見ると、総額の差がどこから来ているのかが見えやすくなります。
条件をそろえたうえで、資料の内容について質問してみるという方法があります。たとえば次のような質問です。
見るのは、回答の中身だけではありません。前提をどう置いたのかを説明できるかどうか、分からない部分を分からないと言えるかどうかも、判断の手がかりになります。運用型広告には配信してみないと分からない部分があるため、「過去の近い条件ではこの数値だったが、御社の条件では変わる可能性がある」といったように、根拠と不確かな部分を分けて説明されると、資料の読み方が定まります。
見込みの数字が良く出ている場合は、どういう前提でその水準になっているかを確認すると、実現性を判断しやすくなります。前提が自社の条件に近いことを確認できれば、その数字を計画の材料として使いやすくなります。
また、質問への受け答えは、契約後のやりとりがどうなるかを推し量る手がかりにもなります。配信を始めると、数値が想定と違ったときに理由を尋ねたり、次の打ち手を相談したりする場面が出てきます。提案の段階での受け答えは、そうした場面のやりとりに近いものです。すでに委託先があり、やりとりの質に課題を感じている場合の整理は、代理店を変えたいときに先に確認したいことの記事で扱っています。
提示された資料を自社だけで評価しきれない場合は、まず費用の区分と前提条件を書き出して整理し、それでも判断がつかなければ、第三者に資料を見てもらうという方法があります。
自社でまずできることとして、次のような整理があります。
こうして並べると、比較できる部分と、条件がそろっていない部分が分かれて見えてきます。
それでも、前提の置き方が自社の条件に合っているかどうかを、自社だけで評価しきれないことはあります。社内に広告の運用経験がない場合は、比べるための基準そのものを持ちにくいためです。その場合は、提示された資料を第三者に見てもらうという方法があります。運用の依頼先を決める前の段階でも利用でき、前提条件の読み方や、依頼先に確認しておきたい点を整理する材料になります。
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