KNOWLEDGEコラム
代理店の変更は、成果が出ない原因が委託先の運用体制にある場合には有効な手段です。ただし原因が商材やサイト、社内の体制側にある場合は、変更しても状況が変わらないことがあります。まず何に困っているのかを切り分けることから始めます。
この記事でわかること
委託先の変更で解決しやすいのは、運用の進め方や報告のあり方など、委託先の業務そのものに関する不満です。一方で原因が商材やサイト、社内の体制の側にある場合は、委託先を入れ替えても同じ状況が繰り返されることがあります。
「広告の成果が出ていないので、代理店を変えたい」というご相談は珍しくありません。ただ、同じ「成果が出ていない」という言葉でも、その中身は一つではありません。報告の内容が薄くて判断できない状態を指していることもあれば、配信自体は動いているのに問い合わせが増えない状態を指していることもあります。
前者のように委託先の業務のあり方に不満がある場合は、依頼先を変えることで状況が動く可能性があります。後者のように、広告をクリックした先のページで問い合わせに至っていない、あるいは扱っている商材が価格面で比較されて選ばれにくい、といった要因が絡んでいる場合は、運用する会社が変わっても結果が同じになることがあります。
そのためこの記事では、「代理店の変え方」の手順ではなく、「そもそも変更が有効に働く状況なのかどうか」の判断から扱います。有効な場合はそのまま進める形で問題ありませんし、そうでない場合は、変更以外の打ち手のほうが目的に近いこともあります。
「成果が出ない」を、やりとり・報告の中身・委託の経緯という3つの角度に分けると、委託先の変更で解決するものかどうかを判断しやすくなります。
不満を漠然と抱えたまま次の依頼先を探すと、同じ状態を繰り返すことがあります。まずは、いま起きていることを具体的な事象として書き出す段階を挟みます。以下のチェックリストで、当てはまるものを確認してみてください。
チェックが「やりとり」と「報告の中身」の2グループに集まる場合、それは委託先の業務の進め方に関する不満です。この領域は依頼先によって差が出やすく、委託先の変更で解決に向かいやすい部分です。
一方で「委託の経緯」のグループに当てはまる場合は、少し性質が異なります。この場合は「代理店を変える」という発想よりも、「広告運用を主業務とする会社に改めて依頼する」という整理のほうが、実態に近くなります。次のセクションで、この状態について詳しく見ていきます。
確認したいのは委託先の姿勢ではなく、どういう経緯で広告を任せることになったかという委託の設計です。広告運用が主業務として設計されていない場合、その状態は発注側から見えにくくなります。
広告の委託が始まる経緯は、「広告を依頼しよう」という起点から始まるとは限りません。実際には、次のような流れで広告も併せて任せている状態がよく見られます。
いずれも、すでに信頼関係のある取引先にまとめて相談できるという合理性があり、始まり方としては自然なものです。ただこの形には、発注側から状態が見えにくいという特徴があります。
見えにくさの理由は、比較対象がないことです。広告運用を主業務とする会社に依頼した場合にどういう報告が届き、どのくらいの頻度で調整が入るのかを知る機会がないため、成果が上がらない状態が続いても、それが委託の設計によるものなのか、広告そのものの限界なのかを判断する材料がありません。
この状態は多くの場合、成果の数字ではなく別の形で表面化します。広告について相談したいときに、相談できる相手がいない。質問はできるが、返ってくる答えが一般論にとどまる。そうして判断が保留されたまま、状況が変わらずに時間が過ぎていく、という形です。
ここで、前のセクションで挙げたチェック項目に戻ります。「広告について聞きたいのに別の相談に話が移ってしまう」「レポートが費用の実績のみになっている」といった状態は、委託先の姿勢の問題というより、広告運用が主業務として設計されていないことの表れである場合があります。広告を主たる業務としていない体制では、日々の配信状況を追い、数値を見て調整するための時間や役割分担が、業務のなかに組み込まれていないことがあるためです。
つまり確認したいのは、委託先の姿勢ではありません。どういう経緯で広告を任せることになり、その体制のなかで広告運用がどう位置づけられているか、という委託の設計です。ここが整理できると、次に取る打ち手も決めやすくなります。
なお、比較対象がないために判断がつかないという状態は、現状を第三者に見てもらうことで解消できる場合があります。運用の切り替えを前提とせずに現状を確認する方法については、後半の変更以外の選択肢で触れます。
委託先の業務範囲にあることは変更で解決しやすく、商材・サイト・社内体制・予算規模といった自社側の条件は、委託先が変わっても残ります。後者が原因の場合、変更しても同じ状況が繰り返されることがあります。
| 区分 | 該当する内容 |
|---|---|
| 解決しやすいこと | 連絡や報告のあり方、担当者とのやりとりの質、運用にかけられる手数、施策や媒体の提案 |
| 解決しにくいこと | 商材の競争力、サイト側の受け皿、社内の意思決定の速度、そもそもの広告予算の規模 |
※ 上記は一般的な整理であり、契約内容や依頼範囲によって当てはまり方は異なります。
上段に並ぶのは、委託先の業務範囲のなかにあることです。レポートに載せる項目、返答までの期間、月にどれだけの調整を入れるか、どの媒体をどう試すかといった内容は、依頼先が変われば変わり得ますし、契約時に条件として擦り合わせられる領域でもあります。
下段に並ぶのは、委託先が変わっても残る条件です。ここは率直に書いておきます。商材が競合と比べて価格や仕様で選ばれにくい状況であれば、広告の配信設計を組み替えても、獲得できる件数には限りが出ます。広告のクリック先となるサイトに問い合わせや購入へ進む導線が整っていなければ、集めたアクセスが成果に変わりません。社内で承認に時間がかかり、素材の差し替えや予算の変更が月単位で止まる状態も、運用の速度を左右します。
予算の規模も同じです。配信量が少なければ、判断に足るデータが集まるまでに時間がかかり、改善の手数を打つ余地が狭くなります。予算をどう決めるかについては、広告予算の決め方の記事で目標から逆算する考え方を整理しています。
下段に原因がある状態で委託先だけを入れ替えると、しばらくして同じ不満が再び出てくることがあります。切り分けの段階で下段に心当たりがある場合は、変更と並行して、あるいは変更より先に、そちらへ手を入れる選択肢も検討の対象になります。
委託先の変更には、金銭以外のコストがともないます。運用の学習期間がリセットされること、過去データの引き継ぎ範囲に制約が生じうること、社内説明の手間、切り替え直後の不安定さの4点は、あらかじめ見込んでおく部分です。
変更を検討する段階では改善への期待に目が向きやすいものですが、負担の側も同時に把握しておくと、判断と社内での合意形成がしやすくなります。
運用型の広告は、配信しながら試し、反応を見て調整を重ねていく性質があります。これまでの委託先が積み上げてきた「この訴求は反応が薄かった」「この配信対象は相性が良かった」といった検証の蓄積は、引き継ぎの範囲でしか渡りません。新しい委託先は、商材と市場を把握するところから始めることになります。
過去の配信実績をどこまで引き継げるかは、契約の条件やアカウントの状況によって変わります。数値の一部しか渡らない場合、これまでの推移と比べながら判断するという進め方が取りにくくなります。どの範囲を引き継げるかは、切り替えを決める前に確認しておく項目です。
委託先の変更は、稟議や契約手続き、関係部署への共有をともないます。なぜ変えるのか、変えた結果を何で評価するのかを説明する必要があり、担当者の時間を使います。切り替え後しばらくは、社内から「変えて良くなったのか」を問われる場面も出てきます。
上記の要因が重なるため、切り替えの直後は数値が振れやすくなります。ここで短期の変動だけを見て評価すると、判断を誤ることがあります。切り替え前に「何か月の実績で、どの指標を見て判断するか」を決めておくと、社内でも共通の基準で見られます。
進め方の中心は、契約期間と解約予告の時期の確認、引き継ぎ範囲のすり合わせ、切り替えのタイミングの検討という3点です。事務的な確認を先に済ませておくと、切り替えの段取りが組みやすくなります。
現在の契約書で、契約期間の区切りと、解約を申し出る期限(何か月前までに通知が必要か)を確認します。自動更新の条項が入っている場合、通知の時期を過ぎると次の期間へ更新されることがあります。ここを先に確認しておくと、切り替えの時期を逆算できます。
何を、どの範囲で引き継げるかを、現在の委託先と新しい委託先の双方に確認します。過去の配信実績データ、これまで使用した広告素材、レポートの履歴などが対象になります。技術的な移管の作業は代理店間で対応される領域のため、発注側としては「何が引き継がれ、何が引き継がれないか」を把握しておく形で進みます。
繁忙期や大きな販促の直前は、切り替え直後の不安定さと重なりやすい時期です。可能であれば比較的落ち着いた時期に切り替えると、評価の期間を確保しやすくなります。契約期間の区切りと事業側の繁閑を突き合わせて決める形になります。
あわせて、新しい依頼先を検討する際は、費用体系や業務範囲の確認も並行します。運用手数料の考え方や見積もりで確認する項目は、広告運用代行の費用相場の記事で整理しています。
委託先を変える以外にも、現在の委託先に改善を求める、第三者に診断だけを依頼する、業務の一部だけを切り出すという選択肢があります。切り分けの結果によっては、こちらのほうが負担が小さく目的に近いことがあります。
「成果が出ていない」という伝え方では、受け取る側も何から手をつけるかを判断しにくくなります。レポートに加えてほしい項目、質問への返答が欲しい期間、月に確認したい打ち合わせの頻度など、依頼内容を具体的にすると擦り合わせが進みやすくなります。伝えたうえで変わらなかった場合に変更を検討する、という順番も取れます。
運用の切り替えを前提とせず、現状の配信設計やレポートを第三者に見てもらう形です。委託先を変えることを決めてから動くのではなく、変えるかどうかを判断する前の段階で使えます。現在の委託先との関係を維持したまま、判断材料だけを先に得られるという点が、他の選択肢と異なります。
これは、前半で触れた「比較対象がないために判断できない」状態への対処として機能します。他社であればどういう配信設計を組み、どこまでの粒度で数値を報告するのかを一度見ておくと、いま受け取っている報告や運用の内容を、自社なりの基準で読めるようになります。委託の設計によるものなのか、広告そのものの限界なのかを分けて考える材料になります。
あわせて押さえておきたいのは、診断の結果として「運用の側に大きな課題が見当たらない」と分かることにも、判断のうえでの価値があるという点です。その場合、原因は運用の外にあると絞り込めます。サイトの導線、商材の見せ方、社内の意思決定の速度など、次に手を入れる場所が具体的になり、委託先の変更に時間と手間をかけずに済みます。改善の手がかりが得られなかったのではなく、探す場所が定まったという結果です。
すべてを移すのではなく、一部の媒体だけ、あるいはクリエイティブ制作やレポート設計だけを別に依頼する形です。切り替えにともなう負担を抑えながら、進め方の違いを比べられます。
切り出す範囲によって、依頼先に求める役割も変わります。配信の実行を担ってほしいのか、方針の整理や判断の支援を求めているのかで、適した相手は異なります。役割の違いは、代理店とコンサルティングの違いの記事で整理しています。逆に、社内で担う範囲を増やしていく方向もあります。自社で運用を持つ場合の判断軸は、広告運用のインハウス化の記事で整理しています。
ここまで挙げた選択肢は、いずれも自社のなかで判断を始められるものです。切り分けを進めるなかで、社内の材料だけでは判断がつかないという場面が出てきた場合は、外部に相談する形も検討の対象になります。
アンドマーケティングでは、運用の切り替えを前提としない現状診断(セカンドオピニオン)を無償で承っています。いまの配信設計やレポートを第三者の視点で確認したい、という段階からご相談いただけます。
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